第1回 ソフトウェア製品の品質見える化への取組み
私は、約38年ソフトウェアの開発に携わってきました。あっと言う間の38年間ですが、ビジネスの根幹は顧客の役に立つソフトウェア開発でした。
今回から品質に関してのコラムを連載しますが、難しいプロセス改善や管理手法について記述するつもりはありません。2010年から取組み、2013年に制度化した「パッケージソフトウェア品質認証制度」の策定作業を進めるにおいて多くを学びました。その学びやトピックスを紹介することで、皆様の製品開発にお役に立てば幸いと考えています。
その品質、誰がチェックしていますか?
我々の製品である「ソフトウェア」の最大の難点は、実際に使用するまでその内容について確認できないことにあります。当然、カタログやWEBでの情報、デモンストレーションで確認することは可能です。しかし、細かな機能まですべてチェックして購入することは一般の消費者にとっては不可能でしょう。
当たり前のように利用しているWordやExcelの機能をいちいちチェックして購入する人はいません。消費者の判断基準は、「メジャーなソフトである」もしくは「その開発・販売会社が信用できる」「価格が適切である」「テレビでCMをやっている会社だから安心である」、その程度の基準で購入しているのが実態です。日本の企業は勤勉で、「悪い商品を販売したら信用が無くなる。最高の品質のものを安価で提供するのが社会的責任である」と感じて必死に努力をして、それが消費者にも理解されています。
ところが日本の製品を海外で販売しようとした場合、どのような問題が発生するのでしょうか?
「この製品の品質は誰が確認していますか?」との質問に日本企業は「自社の品質管理部もしくは保証部が徹底的に行っており、心配ありません」と胸を張って答えます。
ところが外国の人は「えー、自分の会社の製品を自分の会社が検査・保証するなんて信じられない」と思っています。社内では、いくらでもごまかしが可能だと思っているからです。
グローバルスタンダードとしての”第三者視点”
ここが日本人と外国人の大きな差です。北米で電気製品を販売しようとしたら、最低でもUL検査に合格しないと販売できません。安全性が規格に適合しているかの検査を第三者検査機関で検証し、適合性評価報告書を作成してもらい、その書類を提出することで安全性を証明する認証制度です。
つまり品質を検査・評価するのは第三者であり、まちがっても自社の部門ではないということです。逆に言えば、第三者の評価を受ければそれが品質の見える化となります。ゆえに、海外でパッケージソフトウェアを販売しようとするならば、何らかの形で第三者機関のお墨付きをもらわないと信用されないということになります。
国内の話としても、大手の販社に中小企業のパッケージベンダーが取扱ってもらう場合、テストデータの提出や再度テストベンダーでのテスト評価を要求されるケースもあり、結局コスト高となってしまいます。初めからしっかりした基準や規格に沿って開発して、第三者機関の認証を取っておけば二重、三重にコストが増えることはありません。
これまで日本国内にはそれを認証する制度がなかった為、私が所属する一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(SAJ)にて制度を策定することにしました。品質の見える化が業績UPにつながるという証拠は、食品でいう「特定保健用食品」いわゆる特保マークです。成分=品質をマークで見えるようにしただけで、商品価値が高まり収益性が向上しました。このような効果を目指して認証制度の策定を始めましたが、スタート時は困難の連続でした。
それでは次回。