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第2回 日本の常識は世界の非常識・規格の重要性
1回目では、品質の見える化とは「第三者機関の適合性評価をもらうこと」としました。
それでは、適合性の根拠は何でしょうか?ずばり国際規格です。日本国内おいてはJIS規格であり、世界ではISO/IEC及び米国のIEEE規格です。適合性とは、その製品に要求されているいろいろな規格の基準を満たしているということです。
洗濯機のフタから分かるジャパニーズスタイル
こんな話があります。
日本の大手家電メーカーがシンガポールに脱水機付きの二層式洗濯機を輸出しようとしました。ところが、入国審査で危険性があるということで差し止めとなりました。原因は洗濯機を動かしている途中で脱水層の蓋を開けられてしまうので危険であるとの指摘でした。「日本では入れ忘れた洗濯物を途中で放り込む為に蓋を開けますが、危険なので開けた瞬間に止まる機能が付いた安全設計となっています」と担当者が説明しました。
日本人からすると当然のことだと思います。しかし、国際規格では回転中の洗濯機の蓋は開いてはいけない規格となっています。蓋は回転が止まらない限り開いてはいけないのが世界の常識なのです。
利便性を追求するあまり、肝心な国際規格を見落としていたお粗末な結末です。経営者の立場から言えばどれだけ収益を無駄にしたか、これでは業績UPは見込めません。
「品質追求はコスト高」本当にそうなの?
実は品質向上の一番のキーワードは経営者です。経営者の中には、いまだに品質を追求するとコスト高になると嫌う方がいます。これは大きな間違いです。
回線が遅く自動メンテナンスができなかった昔の携帯電話の場合、リコールで全台回収となった時、一台の回収コストは告知や人件費を含めると10万円と言われました。回収した台数は20万台です。信用を失い、200億円の収益を失ったこの会社は携帯電話の開発から撤退しています。最近のスマートフォンは多少の不具合があっても通信機能で対応してしまうので、当時のようなリスクまではないとしても、品質を軽視する経営者は大きな代償を払うことになります。
携帯電話ですと、もう一つ大きな話題はやはり、日本の株式会社NTTドコモとNokia Corporationの欧米方式との通信規格戦争です。携帯電話で先端を走っていた日本企業がこの規格戦争で負けたために、一気に欧州勢力のアジア進出を許し劣勢となったことは記憶に新しいと思います。
また、ちょっと年輩の方はビデオテープの規格でVHSとベータ方式の戦いとなり、最後まであきらめなかったソニー株式会社も部品の供給ができなくなり敗北した歴史も記憶にあると思います。
加速する規格戦争に負けないために
規格は製品開発においての法律です。ですから自分たちに有利な法律(ルール)となるように世界各国は、世界規格を決める規格会議には国を挙げて参加してきます。ところが日本の場合はまったく逆で、関係省庁に相談しても、規格のメリットはそれを推進する企業が受益するものだから政府としては干渉できないとの立場をとっています。グローバル化して国対国の利権争いになっている現状で、一企業が国策で推進してくる外国に対抗できるわけがありません。
実際にパッケージソフトウェアの規格であるISO/IEC25051の世界会議に出席した際でも韓国、カナダをはじめこの規格を重視している国は国の代表として参加しています。一方の日本はメーカーもしくは団体として参加していますから、意見が合わなくなった場合には不利となることは明らかです。
それでも最近は重要な規格であると関係省庁も積極的に支援をするようになってきましたので、状況は改善されてきたようです。経営者の皆様には、自分の会社の製品やサービスに関する国内規格、国際規格には注視していただくことが大切だと思います。