第6回 DX /スマート××の品質対策
新聞やテレビでDXやスマート××という文字を見ない日はありません。
DXは、企業がビジネス環境の変化に対応してデジタル技術を活用してビジネスモデルを改革することです。一方スマート××は、ひと昔前のスマートはカッコイイ(とか体型が痩せている)ことを指していましたが、いつしか本来の「賢い」「利口」という意味とかけ合わせて使われるようになりました。
スマートフォン、スマートハウス、スマートグリッド(=利口な電力網=電力供給側と需要側の両方から制御できる双方向の次世代電力網)、スマートテレビ(=テレビ+インターネット)、スマートインターチェンジ(=ETC専用のインターチェンジ)など、考えてみると色々なものがありますが、とりあえずスマートと命名しておけばいいや、と思っているような気もしてしまいますね。
さて、これらに共通する特徴は「つながる」ということです。単体の機器としての機能に加え、インターネットや独自のネットワークを介して拡張性があることから、利用者にとって利便性が高く普及が進んでいます。
問題は「つながる」ために起きてしまう不具合への対策です。デジタル家電を例に考えてみましょう。
規格に合わせて作れば、どんな製品にも対応するはずでは?
テレビの録画はHD(ハードディスク)ですが、純正のHDが高価なためサードパーティー製のものを利用する方も多いですよね。
その際、製品の箱の裏側などには「対応機種」の記載があるかと思います。ただHDメーカーは理論上、規格を守って製品を作っていればすべてのテレビと接続可能であるはずですよね。ですが実際には、「対応機種」を記載しています。
これは、実機による接続テストを行わないと不具合の有無が確認できないからです。何故そんなことが起きるのでしょうか?
理由は規格の「解釈」が微妙に各社違い、データの転送方法に差があるからです。とくに家電の規格で定めているのは基本項目であり、詳細項目は厳密に規格化されていません。つまり、ある製品(今回の例だとテレビ)が普及し、その周辺機器を開発・販売しようと考えた場合、世の中にあるすべてのその製品(テレビ)と実機での接続テストをしないと品質は保証できないということです。その費用は膨大となり現実的ではありません。そこでメーカーとしては、人気機種や売れ筋機種に絞ってテストを行い、「対応機種」という表示を行なっているのです。
スマートハウスの夢の普及はもう少し先?
これが、例えばスマートハウスではもっと大きな問題となるのは想像に難くありません。住宅側の建築基準法安全基準と総務省の通信規格、それにデジタル家電系の規格をつなげることになるのです。具体的には家庭用のホームサーバー(PC)を設置して家庭内の電力測定やスイッチのオン・オフをスマートフォン(スマホ)を介してコントロールするようなシステムです。
寒い季節、帰宅する時間に合わせてスマホであたたかいお風呂を沸かしておきたい、そう誰もが望みますし実用化もされています。しかし、想定以上には普及が進んでいません。
それは、スマホの主な機種だけで200以上、それにPCの機種、お風呂のコントローラー機種など、全て接続テストするとすぐに数十万件のテストケースが必要となります。アンドロイドOSに関していえば、最低でもメーカー別にアプリケーションテストをしないと稼働の保証はできません。もちろん、単独メーカーの組み合わせであればテストは可能ですが、住宅資材とデジタル家電、すべてを包括しているメーカーは何社あるでしょうか。また、最終的に設置した時の保証を、住宅施工業者が負うのか提供機器メーカーが行うのか決まらないというのも、夢の普及が進まない理由の一つとなっています。
必要なのは他業種との連携
「つながる」便利を追求すると倍々で品質対策が必要となり、他業種との調整が必須となります。しかしそんな困難があっても、日本には「すり合わせ」という優れた文化を持っており、これまでも不可能を可能にしてきました。
検証業界でも沖縄にすべてのデジタル家電を集めたテストベッドの環境を整備すべく準備しています。これにより、開発やメーカーのテスト負担が大きく軽減できると期待されています。
DXに関しては、IT検証産業協会(IVIA)※ の技術委員会より「DX推進支援ガイド」をリリースしております。ここでは、従来の品質だけでなく利用時品質(UX)の大切さも提唱しております。是非参考になさってみてください。
※一般社団法人IT検証産業協会ホームページ (ivia.or.jp)