catch-img

第37回「ちょっと前の台湾IT事情」~台日IT企業交流商談会にて講演~

2016年7月1日に台日IT企業交流商談会が開催され、ゲストスピーカーとして日本の品質認証制度について講演しました。講演は日本語で話をして同時通訳で行われました。台湾は日本向けの需要が大きく、ハード機器に関しては以前から国際規格に準拠した「ものづくり」をしてきたようですが、ソフトウェアに関しては日本より相当認識が遅れていました。依頼する側も提供する側も、「不具合はあるもの。不具合が見つかったらその都度直せば良い」ざっくりこんな認識でした。かといってITリテラシーが低いかと言うと日本より高いのではないか、という感想です。同時に行われている展示会を見て回りましたが、とにかくユニークで楽しいIT機器の宝庫でした。技術力もあり発想力も豊かであると感じたのを覚えています。

​​​​​​​


2016年における台湾のIT技術 

例えば日本でも電力の問題があります。2016年の台湾も電力不足とCO2問題が深刻のようでした。火力発電が65%を占め、原子力発電は18%でしたが、核廃棄物処理の問題で廃炉寸前でした。

これを解決する方法として

  1. スマートグリットで供給方法の効率化を図る

  2. 再生可能エネルギーの利用拡大

  3. 省エネとCO2削減の政策を制定

この政策の実現にIT技術がすでに数多く活用されています。スマートメーターでの消費電力管理は日本の住宅でも始まっていますが、台湾ではプリペイド式の電気メーターが家庭に導入されているようです。電気を使うためには先にプリペイドカードを購入してメーターに入れないと電気が使えないシステムです。後からの集金で回収できない場合を懸念し、このような先払い方式が採用されたようです。消費電力+金額が表示されますので間違いなく省エネにつながります。

また、その都度カードを購入することは不便なため銀行カードから振替えられるチャージ機器もあります。寮、賃貸アパートはこの方式が浸透しているようです。パソコンの展示を見て回った際に、まったく知らないメーカーばかりでしたが、デザインが美しく、スペックも自由に選択できたため、楽しくていくら見て回っても飽きない展示会でした。周辺機器もなにやら用途がわからないものとか、PCカメラにしても盗撮用から防犯用まで盛り沢山でした。ホテルでもエレベーターの中にカードの読取り機があり、朝食に行く際に部屋のカードキーを読み取らせておくと、席が予約できるといった日常のサービスにも活用されています。交通も地下鉄からバス、鉄道までインフラは同じカードで利用可能です。とにかく便利です。   


ITとの向き合い方 

台湾は開発コストが安く、小ロットの生産が可能であることから、このような状況となっていると推察できます。まず「面白そうだから作ってみよう。品質は沢山売れてから対応すれば問題ない」という意識を持ちながら、しかし、日本のマーケットで売る場合は、品質がとても重要であると彼らはしっかり認識しています。治安が良く、対日感情もとても良い台湾にいると、高度成長期の日本の活気を感じました。採算ばかりを重要視して、新しい取組みに欠ける日本のIT企業家にとって、とても良い刺激になりました。

最近の事情がわかったら、また報告します。 

藤井 洋一
藤井 洋一
■略歴  1985年 金融機関退職後、現在の会社を創業  2005年 一般社団法人IT検証産業協会の設立に関わり、ソフトウェア品質向上の活動を推進。2016年から会長を務め、2023年6月より監事として活動中  2013年 一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:ソフトウェア協会)においてソフトウェア製品の品質認証制度(PSQ認証制度)を委員長として制度設計、運用開始  2016年 一般社団法人IT団体連盟の発足に参加、理事及び政策委員として活動。2023年諮問委員会 副委員長として活動中  2018年 「情報銀行」認定制度の制度設計サポート  2019年 工業標準法に基づく試験事業者登録制度(JNLA)等に係る試験事業者技術委員会電磁的記録分野技術分科会委員  ■その他の活動  独立行政法人情報処理推進機構にて「品質説明力強化のガイドライン」作成委員として執筆  ソフトウェア製品の国際規格「ISO/IEC 25051」のJIS化委員