
第45回「注目されている『システムズエンジニアリング』」
前回までに、ソフトウェア製品の品質について測定から評価について一通り説明しましたので、ひと休みします。今回は、最近注目されている「システムズエンジニアリング」についてお話します。
システムズエンジニアリングとは
システムズエンジニアリングには4つのポイントが示されています。(※1)
- 目的指向と全体俯瞰
- 解決策を考える前に本来の目的を明確にし、常に目的を意識しながら考えます。
- 視点と視野を変えながら俯瞰して捉えます。視点としては、時間的視点、空間的視点、意味的視点があります。
時間的俯瞰の例:初期から利用終了後の廃棄まで、さらに世代交代までのライフサイクル全体。
- 多様な専門分野を統合
- 多様な分野(技術、事業、領域、環境、文化、社会など)の知見を統合します。
- 抽象化・モデル化
- 抽象化の視点を柔軟に設定し、多視点から対象を構造化し、システムに関する様々なネットワークを通じて、システムを明らかにします。
- モデルを利用することによって異なる分野の人たちの間での概念共有、情報共有による共通理解の促進を図ります。
- 反復による発見と進化
- 適切に再評価とフィードバックを反復して、新たな解決方法を発見し、段階的に明確化・進化させます。

「目的指向と全体俯瞰」の考え方
4つのポイントで、これまでと異なる考え方は、「目的指向と全体俯瞰」だと思います。 これまでのシステム開発の視点では、問題に対する要件定義を行い、その解決策を考えるのがシステム設計でした。システムズエンジニアリングでは、まずは大きな目的を明確にしようと考えます。
例えば、人事システムでは、通常、「人事台帳をシステム化しよう」「給与計算システムを導入しよう」「勤怠管理をシステム化しよう」と考えていきます。このような思考回路ではなく、「社員が効率的に、気持ちよく働けるシステム」をつくろうというように、「本来システムは何のため?」という大きな視点で目的を設定します。そうすると、一部のシステムではなく、全体を通してのシステムをどうしよう、となります。
入社から始まり教育や昇格、最後は退職までのライフサイクル全体となります。また、効率化を考えて社員証を入退室管理や勤怠管理、社内食堂の清算までひとつで運用しようという発想になります。職種によっては、自動車の運行管理やセキュリティレベルの識別カードとしても活用可能と考えられます。さらに進化させれば、スマホを社員証代わりとして活用し、連絡手段だけでなく、工場の生産稼動状況の入力装置として活用したり、営業の位置情報管理をしたりと無限に広がっていきます。
全体を俯瞰するという考え方は、これまでの日本人に少ない発想でした。また、発想しても実現の可能性がありませんでした。しかし、「つながる世界」となった現代では、多様な専門分野の技術者と協力することで、コストを抑えて実現可能となってきました。抽象化やモデル化は、それぞれの専門化たちが共通認識を持てるようにする手法です。そして、製品やサービスを導入したら、常に進化させていくことが大切です。
何十億円もかけて、古いシステムを現在の環境に合わせるだけの大型案件が、まだまだあります。経営者の皆さま、技術者の皆さま、次の開発案件を検討する際には、「システムズエンジニアリング」の考え方を取り入れることをおすすめします。
(※1)IPA 独立行政法人 情報処理推進機構より引用
システムズエンジニアリングの推進 | アーカイブ
URL:https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/se.html



