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第46回「サポート工数を削減する『マニュアルテスト』」

今回は、「マニュアルテスト」についてお話します。


マニュアルにも国際規格がある

どんな製品にも「操作手順書」、いわゆるマニュアルが付属しています。あまり知られていませんが、このマニュアルにも国際規格があります。特に電化製品は、厳しく製品規制されており米国と欧州(EU)では適用される枠組みが異なるため、二重対応が必要になることもあります。

ソフトウェア製品についても国際規格ISO/IEC 26514(JIS X 0153)があります。読むだけでも膨大な規格書です。主なポイントは「リスクに関して明記すること」です。それを「注意」「警告」「危険」という3段階で明記することが求められます。この記述が無く、利用者に損害を与えたときは裁判で勝てないことが想定されます。経営上の大きなリスクにもかかわらず、ソフトウェア業界では十分に認知されていません。 


​​​​​​マニュアルテストとは

少し話がそれましたが、今回は「マニュアルテスト」の話です。製品テストについては、読者の方はご理解頂いていると思います。マニュアルテストは、マニュアルを見て手順どおりに利用者が使えるかを実験するテストです。例えば、経理システムのパッケージを導入します。最近はクラウドでの提供となりますので、オンラインマニュアルに従ってインストールできるか試します。

利用する人材像を想定して20-50代までの4名に同じ条件のPCを準備して、時間を決めて設定作業をしてもらいます。おおむね2時間程度で行い、「進捗度合い」「わからなかった言葉や表現」「使いやすかったか否か」等アンケートを行います。同じ実験を男女別、PCの経験値で分類して行うとさらに傾向が分析できます。 

利用者は、導入マニュアルの通りにスムーズに進まないと、その製品に対する信頼性が低下します。さらに、実務においてはサポートセンターに問い合わせる回数が増え、企業にとって費用負担となります。

加えて、マニュアルは同じ型式で作成されます。その後の運用においても「わかりにくい」表現は継承されるため、利用者のイライラは募ります。結果、立上げが遅れたり運用ミスが発生したりして、その都度サポートが呼ばれてしまうとサポートセンターの負担が増加することになります。


​​​​​​マニュアル改善による効果とは

この実験は、あるソフトウェア会社の製品に対して、専門学校生・大学生・社会人・主婦を使って行われました。指摘を受けた内容を修正した結果、サポートセンターへの問合せが3割以上軽減したという実証データがあります。ソフトウェア会社は、システム作成には膨大な費用を投入しますが、マニュアルは「おまけ」程度の内容であることが実情です。その理由は、作成側は簡易的な記述でも「あたりまえ」に使えてしまうため、利用者の視点が抜けたまま作成を進めることがあるからです。その結果、サポートの負担が増えても、直接の担当者では無い限り「改善しよう」といった発想に至らないことがあります。


マニュアルの整備・改善は、開発費用から見れば軽微です。 一度見直してみてはいかがでしょうか? 

藤井 洋一
藤井 洋一
■略歴  1985年 金融機関退職後、現在の会社を創業  2005年 一般社団法人IT検証産業協会の設立に関わり、ソフトウェア品質向上の活動を推進。2016年から会長を務め、2023年6月より監事として活動中  2013年 一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:ソフトウェア協会)においてソフトウェア製品の品質認証制度(PSQ認証制度)を委員長として制度設計、運用開始  2016年 一般社団法人IT団体連盟の発足に参加、理事及び政策委員として活動。2023年諮問委員会 副委員長として活動中  2018年 「情報銀行」認定制度の制度設計サポート  2019年 工業標準法に基づく試験事業者登録制度(JNLA)等に係る試験事業者技術委員会電磁的記録分野技術分科会委員  ■その他の活動  独立行政法人情報処理推進機構にて「品質説明力強化のガイドライン」作成委員として執筆  ソフトウェア製品の国際規格「ISO/IEC 25051」のJIS化委員