
第13回 パッケージソフトウェア品質認証制度 最初の認定申請は7社
今回は、品質を改善できない、あるいは改善どころか隠ぺいしてしまうといった問題がなぜ起きてしまうのかということをお話していきたいと思います。
PSQ認証制度が2013年6月にスタートしたことを以前書きましたが、発足後第一号となる認定製品は7社8製品※でした。
※この中には当社が扱う大塚商会のERPソフトウェアであるSMILEシリーズのBS販売管理(申請者は株式会社OSK)も含まれています。詳しくはソフトウェア協会のホームページへ。
申請を受理すると、申請元の企業に現地調査のため訪問することがあるのですが、そこでは色々なことがありました。担当者の方が書類を全然把握されていなかったり、確認したい重要書類がバラバラに保管されていて、足りない書類がどこにあるのか分からないといったことは本当によくありました。事前に準備を依頼していたのに数十分待つということも経験しましたが、これはさすがに苦笑いしてしまいました。 ただ実際、テスト関係の書類は製品の出荷が始まったら、ないがしろにされてしまうケースが多いのです。ですが、それではよりよい品質を実現することは難しい。
PDCAを形骸化させないために
業務改善のフレームワークであるPDCAサイクルについては説明するまでもありませんよね。この中で一番つまずきやすいポイントが“CHECK”です。
なんでもそうですが、やりっぱなしは楽で、振り返ることには痛みが伴う場合があります。次につなげる改善のための振り返りの会議が、誰かへの糾弾や、誰かの弁明を聞く場になってしまい、会議の空気が重くなっていく。それではもはや、建設的なコミュニケーションは難しくなるばかりか、メンバーは「振り返る」行為そのものが嫌になり、遠ざけてしまう対象になります。そしてその集積が、データや書類の管理が雑になることにもつながっていくのです。
組織において、この“CHECK”をどのように行なうかは、品質の分岐点につながります。テストを行なっただけでは意味がなく、誰が、いつ、どのように行なったかを客観的な資料をもとに説明できなければ品質管理はできません。そしてそれを組織や企業全体で共有し、継続して行なう必要があるのです。
先ほど、息が詰まる会議を例に挙げましたが、これは本来、その会議を取り仕切る者がしっかりと舵取りを行ない、フラットな場を作っていかなければなりません。重苦しい空気を重苦しいままにしていてはいけないのです。日本はピラミッド型構造の組織が多いですから、立場が上になる者が「場づくり」を意識していく必要があるでしょう。
いまお読みになられているのが管理者や経営層の立場の方でしたら、ぜひ社内の品質ご担当者に“CHECK”の体制を確認してみてください。不測のトラブル時に求められるのは迅速で誠実な対応です。製品の出荷はゴールではありません。出荷した製品の品質を維持し、その品質をいつでも示せる状態で保管すること、そこまでセットで考えなければならないのです。
つねに完成はない
思い出話になりますが、このPSQ認証制度の話でも、こんなことがありました。
制度がスタートして、実際に第一号が認証されると、いよいよ制度が認知され始めるわけです。当時私にとって、制度のスタートは子どもが生まれたのと同じことのように思えました。自分がこれまで携わってきた制度のスタートを心から喜ぶ気持ちと、これがゴールではないと気が引き締まる思いが入り混じりました。いかに継続してこの大切な制度を成長させていくか。そのために、私たちも「CHECK」の時間を多く割き、制度の運営上の問題点を洗い出しました。
その際には、申請してくださった企業にアンケートをお願いして、申請資料の作成の負担度合いを確認したり、一方で、評価機関や、認定作業を請け負った協会から実際の作業を行った際の情報をヒアリングしたりして、多方面から改善点を探り続けました。
一通りの洗い出しが終われば、その後はそれを集計し、どのように反映させていくかを検討し、実行していきました。そして定期的にまた見直しをする。この時のメンバーはみな、どんどん意見を出す人たちでしたから、ああでもないこうでもないと議論を重ねたのが、私としてはとても楽しかったですね。いい思い出です。
自分の会社と社員をまもるために
さて、今回は少し厳しいことも書きましたが、これは自分への戒めでもあります。経営者である私も、自身の考えや理念を管理職や現場の社員たちにまで浸透させる難しさを感じながら、これまでやってきました。今でもまだ正解は分かりませんが、日々の業務に精一杯取り組んでくれている現場の皆の努力を無駄にしないよう、そして自社製品の品質をより高めていけるような“CHECK”の場を作っていくことはこれからも大事にしていきたいと思っています。
もし、これをお読みになられている方の中で、会社としてまだ規格や認証制度を採用されていない場合は、まずはそこを目指していかれるのがよいのではないでしょうか。以前も触れましたが、指標がある方がやはり効率よく最適化できますから、そのことがひいては自分の会社や社員を守ることにつながるように思います。