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第17回 ISO/IEC SQuaREシリーズの国際規格を利用しよう

ソフトウェアの品質を中心にコラムを書いてきました。今さらですが品質の定義について少し記述します。品質は提供側(開発側)の視点で考えるのか利用者側の視点で考えるのかで異なります。古い品質の考え方はクロスビー(P.Crosby)の定義とよばれる、「品質は要求に対する適合である」です。


こう考えていた方はぜひ考えを改めてほしいと思います。品質を保証するという観点からの品質の定義は「品質は利用者にとっての価値である」とされています。さらに「価値」が進化して「満足度」として置き換えられ近年における品質の定義は「顧客満足度」とされています。この言葉は日本でも多くの企業が使っています。「○○で顧客満足度UP」とか「顧客満足度ナンバーワンを目指す」とか多くの企業スローガンで見られます。これを読み替えると顧客満足度は品質満足度ということになります。



ISO/IEC25000 SQuaREシリーズ

ソフトウェア品質を考えるときに不具合が無いことという方も同様に古い考え方となります。


それではどのように品質を向上させるかとなりますが、最大の武器が「ISO/IECの国際標準に準拠して製品つくりをする」ことです。ソフトウェア製品の品質に関してはISO/IEC25000 SQuaRE(Software Product Quality Requirements and Evaluation)シリーズとして体系化されています。すべてを一度に取り込むのではなく重要度合いの高い項目から順次規格に準拠した形でルール化していき、その結果としてすべてのプロセスにおいて国際標準化していることが望ましいと考えます。



ISO/IEC12207

また、全体を見渡すしくみとしては、ISO/IEC12207ソフトウェアライフサイクルプロセスに関する規格として定義されています。これは複数のソフトウェア製品およびサービスを統合してシステム構築することが複雑で多様化してきた環境の中で運用する際に「同じ言葉を話す」ことができるように共通の枠組みを提供しています。


同じ業界でも同じ作業や項目を表現するときに異なる言葉や表現をすることがあります。ソフトウェア開発では同じ設計書を内部設計と表現したり詳細設計と表現する人もいます。そのため、設計作業の際に記述すべき内容の範囲や粒度に微妙な差異が発生しトラブルの発生原因となります。


ISO/IEC12207では共通用語として使用できる標準プロセスと関連用語が提供されていますのでこのようなトラブルを防止する効果があります。複数の企業が共同で作業する場合などにおいて非常に有効な規格です。



製品のライフサイクル全体をみる

開発というと設計して製造して納品までと思われますがこれらの規格は製品の企画段階から開発、運用、廃棄までのライフサイクルにおいて定義されていますので、ソフトウェア製品以外でも参考になる規格と考えられます。国際規格は多岐にわたりますのでこの後、数回に分けて解説していきたいと思います。


藤井 洋一
藤井 洋一
■略歴  1985年 金融機関退職後、現在の会社を創業  2005年 一般社団法人IT検証産業協会の設立に関わり、ソフトウェア品質向上の活動を推進。2016年から会長を務め、2023年6月より監事として活動中  2013年 一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:ソフトウェア協会)においてソフトウェア製品の品質認証制度(PSQ認証制度)を委員長として制度設計、運用開始  2016年 一般社団法人IT団体連盟の発足に参加、理事及び政策委員として活動。2023年諮問委員会 副委員長として活動中  2018年 「情報銀行」認定制度の制度設計サポート  2019年 工業標準法に基づく試験事業者登録制度(JNLA)等に係る試験事業者技術委員会電磁的記録分野技術分科会委員  ■その他の活動  独立行政法人情報処理推進機構にて「品質説明力強化のガイドライン」作成委員として執筆  ソフトウェア製品の国際規格「ISO/IEC 25051」のJIS化委員