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第29回「ソフトウェア試験の概念」~監視と管理~

前回は試験の計画が必要という話をしました。試験マネジメントプロセスでは、計画を策定したら、各試験が計画通りに実施されて進捗しているかを監視して必要に応じて管理することとしています。当然のことですが、実際には運用されていないケースが多く見受けられ、大きなトラブルのもとになっています。試験における監視とは、試験の状況・内容・成果物に問題ないかチェックする事です。


試験時における監視について


問題として着目するポイントは、次の通りです。

  1. 試験活動の進捗状況で日程通りの量を消化できているか否か
  2. 内容として目的通りの試験が実施されているか否か
  3. 成果物として期待値通りの結果と成果物としての試験文書が書かれているか


以上の内容を、試験計画書の他、組織レベルの試験方針と試験戦略に照らし合わせて判断します。
試験実施時の監視が適切に機能していない場合、以下のような事態を招く可能性があります。

  • 試験はスケジュール通り終了したが、試験の目的は達成できていない
  • 見かけ上の試験は順調に進行しているが、実際には遅延が生じている

  • 見かけ上の試験により製品リスクを軽減できているが、実際には製品リスクは変化
    していない(リスクが潜在して残っている)

  • 残り期間に対して試験の残件が多く、日程内に消化できる見込みがない
    (試験終盤になって突然判明し、品質が担保できなくなりリリース遅れの原因となる)

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管理活動


監視の結果、試験活動に問題が認められた場合(試験計画からの逸脱が認められる、既知のリスクが発現している、新規のリスクが識別されたなど)は、問題を是正するための措置が必要となります。これが管理です。管理活動は、「試験活動の責任を割り当てる」「上位レベルのマネジメントからの指示を実施する」などの作業も含みますが、ここでは説明の便宜上、計画と実績との乖離の是正に焦点を当てています。

管理として行わなければならない主な作業は以下の通りです。

  • 計画と実績との乖離を正すための措置を打つ
    (試験計画書の変更、要員の変更などを含む)
  • 既知のリスクの変化や新規に識別されたリスクに対処する
    (特定の作業への要員のシフト、テスト完了基準の変更などを含む)

ソフトウェア試験におけるPLAN・DO・CHECKであると置き換えて考えるとわかりやすいと思います。
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藤井 洋一
藤井 洋一
■略歴  1985年 金融機関退職後、現在の会社を創業  2005年 一般社団法人IT検証産業協会の設立に関わり、ソフトウェア品質向上の活動を推進。2016年から会長を務め、2023年6月より監事として活動中  2013年 一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:ソフトウェア協会)においてソフトウェア製品の品質認証制度(PSQ認証制度)を委員長として制度設計、運用開始  2016年 一般社団法人IT団体連盟の発足に参加、理事及び政策委員として活動。2023年諮問委員会 副委員長として活動中  2018年 「情報銀行」認定制度の制度設計サポート  2019年 工業標準法に基づく試験事業者登録制度(JNLA)等に係る試験事業者技術委員会電磁的記録分野技術分科会委員  ■その他の活動  独立行政法人情報処理推進機構にて「品質説明力強化のガイドライン」作成委員として執筆  ソフトウェア製品の国際規格「ISO/IEC 25051」のJIS化委員